データベース設計などに使われる「ER図(実体関連図)」の起源、記法、例、コンポーネント、種類、制限などを、5分で学べるかんたんガイドとER図とEER図基本動画ガイドで、ER図について全て学びましょう。

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ER図とは?
実体関連 (ER) 図とは、人、オブジェクト、コンセプトといった「実体」のシステム内での関連を示す設計図の一種です。ER 図は、主にソフトウェアエンジニアリング、企業情報システム、教育および研究の分野における関係データベース設計やデバッグを目的として広く利用されています。ERD または ER モデルとしても知られ、長方形、ひし形、楕円形などの一連の定義された記号と接続線を用いて、実体、関連とその属性の間の相互関連性を表すものです。実体を名詞、関連を動詞とした文法構造を反映する図でもあります。英語では(Entity Relationship Diagram)とも呼びます。
ER図は、実体そのものの間の関連ではなく、実体内の要素の関連に重きを置いたデータ構造図 (DSD) に関連した図です。また、ER 図はしばしば、プロセスやシステムの流れを描き出すデータフロー図 (DFD) とも関連して用いられます。
ER モデルの歴史

現在、ピッツバーグのカーネギーメロン大学教員を務めるピーター・チェン(別名ピーター・ピンシャン・チェン)が、1970年代にデータベース設計のために ER モデルを開発した人物として知られています。MIT のスローン経営学大学院助教授を務めていた1976年に、彼は「実体関連モデル: 一体化されたデータ像を目指して (The Entity-Relationship Model: Toward a Unified View of Data)」と題した著名な論文を発表しています。
より広い意味では、事物の相互関連性の描写の起源は、古代ギリシャ時代のアリストテレス、ソクラテスやプラトーの業績に見られます。近代では、チャールズ・サンダース・パースやゴットロープ・フレーゲといった哲学者、論理学者の19世紀と20世紀の 業績にも見られる内容です。

1960年代および1970年代までに、チャールズ・バックマン (写真上) や A.P.G. ブラウンはチェンのアプローチの先達に当たる研究者たちと共同で研究を進めていました。 バックマンは一種のデータ構造図を開発し、この図は彼の名からバックマン図と名付けられています。ブラウンは実世界のシステムのモデル化に関する論文を発表しています。 また、ジェームズ・マーティンは ERD をより洗練されたものに進化させました。チェン、バックマン、ブラウン、マーティンを始めとする研究者らは、ソフトウェア設計に広く使われる統一モデリング言語 (UML) の開発にも貢献しています。
ER図の使い方と活用メリット
- データベースの設計: ER 図は、関係データベースのモデリングや設計において、ロジックやビジネスのルール (論理データモデルの場合) および実装する特定の技術 (物理データモデルの場合) に関して使用されます。ソフトウェアエンジニアリングにおいては、ER 図は情報システムプロジェクトの要件を判断する最初のステップとして用いられるのが一般的です。その後のステップでは、特定のデータベースのモデル化にも用いられます。関係データベースには同値関係表が含まれ、必要に応じてこの表の方式で表すことが可能です。
- データベースのトラブルシューティング: ER 図は、既存のデータベースを分析し、ロジックや実装における問題を特定して、解決するために使用されます。図を描画することで、問題点が浮き彫りとなります。
- 企業情報システム: ビジネスプロセスに用いられる関係データベースの設計や分析に ER 図が使用されます。実体、行動、相互作用に関する処理済みのデータを用いるビジネスであれば、関係データベースの作成が役立つ可能性があります。プロセスの効率化、情報の発見が容易となり、成果の改善につながります。
- 業務改革 (BPR): ER 図は、業務改革に用いるデータベースの分析や新たなデータベースの作成に役立ちます。
- 教育: 現在の教育現場でデータベースは、教育目的で使用する関連情報を保存し、後に活用するために広く活用されています。こうしたデータ構造の計画に ER 図を活用することができます。
- 研究: 構造化データを主なテーマとする研究は数多いため、データ分析のための有用なデータベース構築において ER 図は重要な役割を果たす可能性があります。
ER図の特徴
ER 図は、実体、関連と属性で構成されます。また、数字で関連を定義する濃度という概念も用いられます。以下の用語集をご覧ください。
エンティティ
人、オブジェクト、概念やイベントなど、定義可能で、関連するデータを格納可能な存在を指します。実体は名詞と して捉えることが可能で、顧客、学生、車、または製品などがあり、一般に長方形で表されます。
実体型: 実体が特定の学生やアスリート個人を指すのに対し、実体型は学生やアスリートのグループといった定義可能な集団を指します。複数の顧客、学生、車、または製品なども例として挙げられます。
実体集合: 実体型と同じですが、例えば初日に授業に登録した学生など、特定の時点で定義されます。その他の例としては、先月購入した顧客、フロリダ州で登録された車などが挙げられます。関連用語としてインスタンスがあり、この場合には、特定の人や車が実体集合のインスタンスとして表されます。
実体の分類: 実体は強実体、弱実体、関連実体に分類されます。強実体 が自身の属性のみにより定義可能であるのに対し、弱実態 は自身の属性のみでは定義不可能です。関連実体は、実体集合内の実体 (または要素) を関連させます。
実体のキー: 実体集合内で実体を一意に定義する属性を指します。実体のキーには超キー、候補キー、主キーの3種類があります。超キー: 実体集合内である実体を共同で定義する一連の属性 (1つまたは複数)。候補キー: 超キーとして定義するための属性を最小限有する (=極小の) 超キー。実体集合には複数の候補キーが含まれる場合もあります。主キー: 実体集合を一意に定義するためにデータベース設計者が選択した候補キー。外部キー: 実体間の関連を定義するキー。
関係
実体の相互作用に加え、実体同士が関連する方法を示します。関連は動詞として捉えることができます。例えば、名前のある学生が講義に登録するとします。その学生と登録対象の講座が2つの実体となります。そして、これら2つの実体を登録という行為で接続するのが関連となります。一般に、関連はひし形やラベルの形で接続線に直接表示されます。