「突然の大きな変化ほど、人の心に苦痛を与えるものはありません。」
— Mary Wollstonecraft Shelley (『フランケンシュタイン』)
世界は絶え間なく変化しており、私たちは皆、時間と空間の法則に囚われています。人生においては、誰もが自発的に、または不本意に変わることを強いられます。しかし、特に歴史が長い組織の場合、組織における変化には抵抗が伴います。組織内のリーダーや組織を構成する数多くの従業員の1人など、立場は違っても、あらゆる事業につきものの日常業務の多さを考えると、変更の実装がとても不可能に思えることも多々あります。
しかし、事業が持続可能であるためには、変化への適応が必要です。実績のあるシステムや方法で成功している企業であっても、事業慣行を更新し、長期にわたって持続性を確保していく必要があります。大きな変化が起こったとき、優れた経営陣は、繁栄する企業と衰退する企業の違いを生む意思決定を下すことができます。シームレスに企業を導けるリーダーは、利益を最大化できる機会も享受できます。
組織の変革については、さまざまな研究者が専門知識を活用して調査を行ってきました。ビジネスの世界における変革管理のモデルに関して言えば、1995年に『企業変革力』を著したジョン・コッター博士ほど影響力の大きい人はいません。ハーバード・ビジネス・スクールの教授であり、組織変革に関する世界的に有名なソートリーダーとして、コッター博士は変更プロセスを8つの変更管理ステップに分解しており、現在これは「コッターの8段階の変革モデル」と呼ばれています。
それでは、その各ステップを詳細に見ていきましょう。

コッターの8段階の変革モデル
コッター博士は、変革や戦略実践のプロセスの前、途中と後を通じて多数のリーダーや組織を観察した後に変革モデルを開発しました。コッターの8段階の変革モデルでは、組織の変革リーダーシップを次の変革管理ステップに分類しています。
1. 危機意識を高める
「壊れていないものを直すな」と言いますが、多くの組織の文化にはこうした考え方が染み付いているため、効果的な変更はすべからく、問題の解決策として提示する必要があります。これを達成するには、以下のようなスタンスを取る必要があります。
- 近い将来または遠い将来に発生する可能性のある潜在的な脅威 (テクノロジーの変化、競合他社の進歩、市場の需要の変化など) を評価する。
- 自社が活用できる潜在的な機会に対処する。
- 自分のビジョンを説得力のある方法で説明するための真摯な対話を開始し、さらに利 害関係者が懸念を表明し、提案について率直に検討できる機会を作り出す。
- 利害関係者、顧客、影響力のある業界リーダーからのサポートを求め、立場を固める。
2. 強力なグループを形成する
大企業での変革をリードするためには、味方や利害関係者を巻き込むことが必要です。自分のビジョンに明確に賛同してくれるメンバーを社内に持つことで、強力なメッセージを送り、スピーディに支援の輪を広げることができます。そのためには、以下のような方法が有効です。
- 組織内の主要な変革のリーダーと利害関係者を特定し、ビジョン実現への支援を求める。
- チームとして一貫して公に運営されるグループを創設する。
- グループとしての弱点を評価し、さまざまな部門や企業レベルから多くのメンバーを巻き込んで補う。役職やレベルに多様性を持たせることで、社内のさまざまな職位にビジョンが持つ力を分散させることができます。
3. 変革へのビジョンを創造する
そもそも、変革のプロセスが始まったのは、業務の進め方として考えられるあり方、本来実現すべきあり方についてのビジョンが存在したからです。実現したい変革を達成するには、そのビジョンを明確で理解しやすいものにすることが重要です。ビジュアルを活用してプロセスとシステムを計画し、現在機能しているものとそうでないものを確認することで、切迫感を演出し、変革に対する明確なビジョンを確立することができます。
このプロセスの一環としては、以下のような対応も必要です。
- 変革の過 程で具現化したいコアバリューを特定する。
- ミッションステートメント、または自分が思い描く未来の最も重要な部分を捉えた文章1~2文を作成する。
- そのビジョンを実行するための論理的な戦略を作成する。
- 利害関係者とグループのメンバーがそのビジョンを明確かつ簡潔に伝えられるようにする。
- ミッションとビジョンのステートメントを頻繁に暗唱してリハーサルする。

4. ビジョンを伝える
組織内でのコミュニケーションにはさまざまなものが大量にあるため、ビジョンをメールで送信したり、組織のメンバーと共有したりするだけでは十分ではありません。変革を効果的に導入するには、チャンスがあるたびにビジョンを繰り返し、以下のような方法で望ましい対応を示す必要があります。
- 自分のビジョンについて、確信と説得力のある表現で頻繁に語りかける。
- オペレーションから会社としての士気まで、ビジョンを社内のすべてに結び付け、相互に関連付ける。
- 前のステップで作成したビジュアルを共有して、現在の状態と将来の状態の違いを明確に示す。
- 従業員の懸念や不安に公然と、かつ率直に立ち向かう。

5. 障害を取り除く
この時点に到達するまでには、おそらく変革への抵抗勢力が出現していることでしょう。ビジョンを推進するには、率先して新しいアイデアを採用する際の障害を取り除くことで、チャンスの確度を高める必要があります。以下の方法を試してみましょう。
- 業界のリーダーを見つけ、その文脈で変化を説くことで変化の価値を高める。
- 組織のレイアウトを評価し、ビジョンと組織のさまざまな階層とが相互に一致していることを確認する。
- 変革への抵抗が最も強い層を特定し、その懸念を取り除くか、抵抗を回避するための積極的な解決策を作成する。
- 初期段階で変革をサポートし、実行する人に報酬を与え、 認める。
6. 短期的な勝利を生み出す
変革は一瞬の火花だけでなく、一貫した流れによっても実現します。ビジョンを定着させるためには、そのビジョンに弾みをつけることが不可欠です。短期的な成功は、新しいビジョンに取り組むメンバーにとって大きな動機となり、ビジョンに対する否定論者や批判者と戦うための証拠としても最適なものです。以下の方法を試してみましょう。
- 費用がかからず、潜在的な反対者からの承認を必要としない短期プロジェクトを見つける。
- 初期の目標に失敗すると提案した変更の価値が損なわれる可能性があるため、適切なプロジェクトやターゲットを慎重に選択する。
- 目標達成に不可欠なチームメンバーに報酬を与える。
7. 変化を土台にする
変革の最初の段階で成功を収められるのは素晴らしいことですが、変化を維持するには十分ではありません。すぐに成功が見られると、あたかも変革のプロセスが完了したような印象を受けがちですが、真の変化は繰り返しと拡大によってのみ実現可能なものです。変化を確実に積み上げていくためには、以下を行う必要があります。
- 成功のたびに何がうまくいき、うまくいかなかったかを分析する。
- 徐々に野心的な目標を設定して、達成時に指数関数的な勢いを築く。
- 影響力のある利害関係者やチェンジエージェントを追加で巻き込む。
8. 企業文化の変化を定着させる
変更プロセスの最後のステップでは、変革が企業文化に確実に組み込まれるようにします。時間の経過、経営陣の入れ替わりやスタッフの異動などを理由に、変更の影響がいとも簡単に消えてしまうこともあります。変化を企業文化に確実に組み込むには、以下を心がけましょう。
- 機会があれば必ず、進捗について伝える。変化に対するビジョンがもたらしたサクセスストーリーを共有し、他の人のストーリーを繰り返し伝える。
- 主要なグループと変革担当メンバーの働きを継続的に評価し、思い描いた変化に対するその貢献と実績を称える機会を作る。
- すべての新入社員とオリエンテーションプロセスに変革のコアバリューを浸透させる。
- 後継者計画で先代のリーダーの遺産を維持できるよう、新しいリーダー全員から早い段階で賛同を得る。
あらゆる分野に適したモデル
コッターの8段階の変革モデルは、ビジネスから政治、教育、さらにはスポーツまで、組織心理学のほぼすべての分野で活用されています。大企業の変革を主導したり、他の誰かのビジョンの実行を支援するなど、組織のあらゆるレベルでこうしたステップの知識が役立ちます。
次に新しいプロジェクトに取り組むときや、新しい取り組みを主導するときは、この変更モデルを取り入れて、どれだけ効果的に変更を実践できたかを確かめてみましょう。変化に対処する能力を磨くことで、人生のあらゆる分野で大きな価値を実現できるようになります。
進路を描き出す
プロジェクトやプロセスにおける変更管理を実装する際には、情報を伝達し、新たなオーディエンスにビジョンを提示する上で、ビジュアルが非常に重宝します。アイデアを固めたり、最も重要なメッセージに優先順位を付けることもしやすくなります。実現したい変革の進路を設定するには、変革プロセスを図式化するのが最も確実な方法です。


会社を変革すべき理由を明確でわかりやすい例で見せたり、変革を実行するための手順を示したりする場合、フローチャートや図を使うと、利害関係者がビジョンを理解し、納得し、新しいビジョンを明確かつ一貫性をもって採用しやすくなります。分かりやすいビジュアルエイドを簡単に作成できる直感的なインターフェイスと主要プラットフォームとの統合により全社で図を共有できる Lucidchart は、変革リーダーにとって最高のツールとなります。

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