技術ロードマップ

技術ロードマップとは?書き方と作り方

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トピック :

  • エンジニア

ビジネスの成熟に伴い、競争力のある製品やサービスを提供し続けるための要件も成長し、進化していきます。ビジネスを持続可能な形で成功させるには、人事やワークフロー管理から設備投資や新技術など、さまざまな領域において、業界の変化、顧客や取引先のニーズの変遷に合わせて適応していかねばなりません。

こうした変化の中で成功を収められるのは、業界の進化を予測し、それに合わせて徹底した計画を立てている企業です。変化に対する計画を立案するのは容易ではありませんが、適切なデータ、調査、加えて明確なロードマップがあれば、不況を乗り越え、さらにその中で繁栄する企業となれるでしょう。

利用可能な技術の使用と応用は、ビジネスの中でも特に正確な更新と予測が必要な分野です。業務プロセスの改善、より正確で有用なデータの提供、全般的な能力の向上に役立つ技術の進歩は、ビジネスの現状を打破し、変革を起こす上で最も有力なツールとなるものです。

この記事では、技術ロードマップに焦点を当て、技術ロードマップとは何か、さらに企業や組織の持続可能な将来設計の上でこうしたロードマップを役立てる方法や効果的な技術ロードマップの書き方と作り方をご紹介します。

技術ロードマップとは?

技術ロードマップとは、特定の組織における技術の導入計画を表した文書や図を指し、ビジネスリーダーが導入すべき技術の種類、タイミングや理由を計画して戦略にまとめ、高額なコスト負担を伴う失敗を避け、技術が陳腐化する見通しを想定するために作成されます。

デジタル変革に取り組んでいる場合には、短期や長期の変革目標を達成するための戦略の概要を含める必要もあるでしょう。

技術ロードマップ作成にはさまざまな手法やモデルがありますが、通常は IT システムロードマップと技術ロードマップの2つのカテゴリーに分類されます。

IT システムロードマップ

IT システムロードマップとは、企業や組織全体で重要な機能を実現するためのパラメータ設定を目的に設計された図やモデルを指し、現在の IT 能力、予測される IT 関連のニーズや事業戦略の実践のために予定されている改善を効果的に示す上で有効です。

IT ロードマップは一般に、事業継続のための主要なシステムに関する計画を伝えるために使用されます。こうしたシステムには、顧客関係管理システム (CRM)、企業資源計画システム (ERP)、データ分析システム、ID 管理システムやサイバーセキュリティシステムなどが含まれますが、これらに限定されません。

技術ロードマップ

技術ロードマップとは、現在利用可能な技術を図示し、今後予定されている改善を強調するもので、今後陳腐化しそうな技術や耐用年数に達する技術なども盛り込んでいきます。例えば、技術ロードマップの場合には、従来のシステムのサポートが終了し、新しいシステムが導入されるタイミングも盛り込みます。

技術ロードマップは、組織がビジョン実行のための戦略や実装を検討していく中で、投資すべき技術を決め、その実装方法を考えていく上で役立ちます。また、ビジネス面や組織としての長期的な目標と短期的な目標の両方を達成できるような技術インフラの改善を実現するツールとしての役割を担います。

技術ロードマップが必要な理由

技術ロードマップの役割は、新しい技術ソリューションの導入や既存の技術ソリューションのメンテナンスのための全般的な行動指針を定め、IT、ソフトウェアエンジニアリング、運用の各部門の管理職や営業チームなど、関係するステークホルダー間の調整を行うことにあります。

こうしたロードマップが、組織にとって望ましい成果を可視化し、準備し、実践する上で役立ちます。徹底した技術ロードマップを作成することで以下を実現できるようになります。

  • 自社の IT インフラの能力を明確に把握し、それがビジネスの成果にどう結びついているかを把握する。
  • 現在の IT の問題点に対応する。
  • 不要な技術やアプリケーションを排除してコストを削減する。
  • 喫緊のニーズに合った技術の導入で生産性を向上させる。
  • IT とサイバーセキュリティを向上させる。
  • IT インフラの弱点を把握してシステム障害を回避・軽減する。
  • 事業面での優先事項の競合を解決する。
  • デジタル変革に備える。

将来に向けて企業の体制を整えるため、デジタル変革戦略を立案しましょう。

方法をチェック

技術ロードマップの主な構成要素

技術ロードマップには、重要な8つの要素があります。

目標

技術ロードマップや IT ロードマップには、企業や組織がその技術の導入によって達成したい長期的な目標と短期的な目標の両方を含める必要があります。こうした目標は、技術システムによって実現できる事業運営や、ビジネスの継続的な進化に伴ってシステムをメンテナンスする上で必要な要素に注目して設定します。

システムの新機能

技術強化の実装によって提供される新しい機能を指します。例えば、ウェブサイトやモバイルアプリなどの顧客向けプラットフォームにチャットボットを追加することで、拡張性を強化し、インバウンドとアウトバウンドの両方のマーケティング戦略を強化できます。こうした新機能は、CRM システムからサイバーセキュリティシステムまですべてが対象となります。

リリース計画

リリース計画とは、新たな技術によって提供される新機能への対応に向けてシステムを強化するための要件を示したものです。こうしたシステムの強化内容は一般的に予測可能で、数か月前に予定されることもあります。リリース計画は企業や組織の全体で共有する必要があります。

マイルストーン

マイルストーンとは、技術の導入プロセスで達成する重要なベンチマークを指します。ステークホルダーがこうしたマイルストーンを追跡することで、長期的な目標に向けた進捗状況を評価・理解し、さらにその目標達成のための新技術の成否を評価することができます。マイルストーンには通常、具体的な日付が設定されており、企業や組織が想定される成果の達成に向けて順調に進んでいるかを確認するパフォーマンスのチェックポイントとして機能します。

リソース

リソースとは、新しい技術の導入や既存の技術システムのメンテナンスに必要な時間、資本、エネルギーや人材を指します。例えば、IT チームは、新しいオペレーティングシステムを展開しながら、同時に既存のシステムを適宜更新する方法を計画する必要があります。こうした作業には部門を超えた協業が必要となるため、複数のグループやチーム間に依存関係が生じます。ロードマップを明確に定めておくことで、協業がスムーズになります。

トレーニング

新しい技術システムを導入する際には、必ずトレーニング期間を設けて、担当者が新しいシステムを効率的に使いこなせるようにする必要があります。ロードマップ作成の際には常にトレーニング期間を考慮しましょう。これには、社内のチームが新しいシステムを導入し、サポートするために必要なガイダンスも含まれます。トレーニングは、システムの新規導入と既存システムの更新の両方の場合に必要となります。

リスク要因

リスク要因とは、新技術の導入成功の妨げとなりうる内部や外部の潜在的な脅威を指し、具体的には、対象となる技術そのものの限界、質の低いユーザーインターフェイスなどにより新技術の採用が困難な場合、事業面や組織のニーズ、目標に影響を及ぼす市場の混乱の発生などが考えられます。

ステータスレポート

ステークホルダー全員が新技術の採用の進捗状況を把握し、情報を共有するためには、ステータスレポートが必要です。あるシステムの導入が遅れると、そのシステムに依存しているすべての事業部門に遅延が波及する可能性もあります。

例えば、物流会社が新しい物流ソフトウェアを導入する場合、この導入プロセスが遅れると配送チームの業務に支障が生じ、停止してしまうこともあります。技術ロードマップの活用にはチームメンバーとの密なコミュニケーションが欠かせませんが、この問題を解決するのがステータスレポートです。

技術/IT ロードマップの例

技術ロードマップや IT ロードマップに盛り込むべき内容を把握したところで、次にロードマップの仕組みを確認していきましょう。技術ロードマップはガントチャート製品ロードマップのような形式で、プロジェクトをさまざまなタスクに分類した形で示し、四半期またはそれ以降を対象期間に含めます。

以下の技術ロードマップの例を見てみましょう。クリックするとテンプレートとして開き、カスタマイズできます。

IT ロードマップの例
IT ロードマップの例(オンラインで変更するには画像をクリック)

技術ロードマップの書き方と作り方

役立つ技術ロードマップには、以下の3つの特性が必要となります。

分かりやすい

技術ロードマップや IT ロードマップには上述の重要な要素を含め、漏れのないようにする必要がありますが、分かりやすさにも配慮が必要です。最初に表示されるテキストを最小限にし、タスクを色分けすれば、ロードマップが一目で理解でき、戦略が望ましい形で伝わるようになります。

現実的である

ロードマップに現実的でない期限が設定されていたり、プロセス内の主要なタスクが抜けていたりすると、誰の役にも立ちません。ロードマップにプロジェクトを追加する際には、必要となる作業量、プロジェクトの所要時間、費用面での余裕などを現実的に考えるようにします。

簡単に共有

ロードマップを作成し、仕上げるまでの過程では、IT、プロダクトマネージャー、プロジェクトマネージャー、運用、エンジニアリング、法務の各部門など、さまざまなステークホルダーが関与してくるため、これら全員と簡単にコラボレーションできるツールを使うことが重要です。また、共有のロードマップがあれば、確立されたビジョンの実行に関与するすべての人に伝えられ、将来的に実装面での問題が発生するリスクを軽減することができます。

進化する

技術ロードマップは、企業の戦略や目的と整合性があり、IT 部門の将来計画の立案に役立つものでなければなりません。これはつまり、新しい取り組みや課題に合わせてロードマップを継続的に変更する必要があるということでもあります。

ロードマップは頻繁に見直し、プロジェクトやスケジュールに変更があった場合には更新するようにしましょう。変更内容がすぐに更新されるクラウドベースのプラットフォームを使えば、常に最新の情報が反映されたロードマップを活用することができます。

日常業務に技術システムが欠かせないビジネスにとって技術ロードマップは貴重なツールであり、その最終的な目的は、明確な行動指針を作成し、主要なステークホルダーを調整することにあります。今すぐ技術ロードマップや IT ロードマップを作成して将来に備えましょう。

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