
CRM戦略で顧客ロイヤリティを高める
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新規顧客の獲得には、既存顧客の維持の5倍のコストがかかります。ただ、顧客のロイヤリティを高め、お得意様を離さないためにはどんな戦略を取るべきでしょう?
顧客関係管理 (CRM) は、企業が優良顧客のロイヤリティを育て、購入者の体験を向上させるための戦略的プロセスを開発する上で役立ちます。
以下の方法を試してみましょう。

CRM とは?
CRM とは、顧客関係管理 (Customer Relationship Management) の略で、企業が現時点と将来における顧客との関係を管理し、最適化することで顧客中心の文化を築くために使われる基本的な戦略です。
したがって、CRM に特化する企業は、企業が自社と顧客とのやり取りに関するデータを分析し、顧客への提供価値と顧客維持率の向上、収益の増加につなげるための支援を提供しています。
言い換えれば、CRM は、個人またはグループとしての顧客への理解を深めることで、顧客のニーズを満たし、その期待を超えた価値の提供を目指すものといえ、最終的には CRM に秀でた企業が競争優位性を獲得できるようになります。
注 : 「CRM」が顧客と企業との関係を管理し、CRM 戦略の実現につなげるソフトウェアやソリューションを指すことも多く、混乱を避けるために、この記事ではこうしたソフトウェアを「CRM ソフトウェア」と呼びます。
CRM の目的
企業の目的は、自社の製品やサービスから利益を生み出すことにあります。CRM の目的は、企業がこうした目的を達成できるよう、戦略的に重要な顧客との関係を最適化することを通じ、利益を最大化し、長期的な成功を築くことにあります。
戦略的に重要な顧客とは、企業にとって最も価値の高い顧客を指します。通常、この戦略的に重要な顧客が顧客全体に占める比率は約20%に過ぎませんが、全体収益の80%を生み出しています。こうした重要な顧客は平均的な顧客よりも多くの収益、ロイヤリティと価値を生み出すため、あらゆる事業戦略において重要な役割を担っています。
CRM においては、主に戦略的に重要な顧客に注目し、最も価値のある顧客セグメントを活用することを通じて、長期的な収益性と競争力の向上を目指します。
4つの主要 CRM 戦略モデル
顧客関係管理にはさまざまな戦略やモデルがありますが、この記事では、代表的な CRM の4つのモデルについて簡単にご紹介します。

IDIC モデル
IDIC モデルは、状況に合わせて CRM を実践するための一般的なベースとして Peppers and Rogers Group が開発したもので、「IDIC」とは、CRM 導入の特定 (identify)、差別化 (differentiate)、交流 (interaction)、カスタマイズ (customize) の4つのステージの英語の頭字を取った略語です。
特定
最初のステップでは、顧客の名前、住所や購入履歴などの情報を社内の各接点から収集し、顧客を特定します。
顧客のニーズや要望、購買行動をより深く理解するために、顧客一人一人の情報やデータをできるだけ多く収集することが大切です。
差別化
次に、現在の生涯価値と予測される生涯価値に基づき、顧客を差別化し、セグメントに分けていきます。顧客によって企業にもたらす価値は異なることを念頭に置いて作業を進めます。
企業にもたらす価値に基づいて顧客を差別化することで、CRM 施策で最も価値の高い顧客を優先し、セグメント別に最適な接客を調整して、収益性を最適化することができます。
交流
このステップでは、CRM 計画を応用して顧客とのやり取りを行います。顧客の分析とカテゴリー分けが完了しているので、接客の内容もカスタマイズでき、例えば、大切な顧客に継続的なご利用を促すために特典を提供するなど、それぞれのニーズに合わせた対応が可能となります。
顧客との一つ一つのやり取りから学びを得て、今後の接客の継続的改善につなげるようにしましょう。
カスタマイズ
顧客とのやり取りを記録した後は、その 内容を分析して高度にカスタマイズされた個別のサービスの開発につなげます。こうすることで、顧客のニーズや期待を非常に狭い範囲でピンポイントに特定し、それを確実に満たせるようになります。

QCI モデル
品質競争力指数 (QCI) モデルは、顧客「関係」モデルではなく顧客「管理」モデルと称され、獲得、維持、浸透の3つの活動に焦点を当てたものです。
QCI モデルでは、まず顧客の外部環境の分析からプロセスを開始します。顧客が製品購入や自社セールスチームとのやり取りの準備ができているか否かは、その顧客の抱える問題点や事業目標などの要因に左右され、これがカスタマーエクスペリエンスにも影響します。そして、カスタマーエクスペリエンスは、顧客への提案 (顧客に提供内容) や顧客管理のあり方にも影響を与えます。内側の円を拡大してみるとよく分かりますが、顧客獲得と維持のためにはさまざまな活動が必要となります。
QCI モデルでは、こうしたシステム全体を維持するために必要な人材や技術も検討します。QCI では CRM の「関係」が「管理」に置き換えられていますが、人中心のモデルである点は共通しています。
ペインのファイブフォースモデル
エイドリアン・ペインとペニー・フローが開発したファイブフォース CRM モデルは、部門横断的なアプローチで効果的な CRM プロセスの実現を目指すものです。
このモデルは、部門横断的な CRM プロセスと CRM 実践のための重要な要素という2つの構成要素から成ります。
ペインのモデルには以下の5つのプロセスが含まれます。
- 戦略開発
- 価値創造
- マルチチャネル統合
- 情報管理
- パフォーマンス評価
また、CRM の実践を成功させるために重要な4つの要素は以下のとおりです。
- CRM への準備
- CRM の変革管理
- CRM のプロジェクト管理
- 従業員管理
CRM 戦略を企業に導入する際には、CRM 準備度評価を行い、新しい CRM プロセスを導入するための準備ができているかどうかを判断する必要があります。
また、CRM には企業文化や業務の抜本的な転換が伴うため、新しい戦略を導入し、CRM の取り組みが複雑化するに従い、CRM の変革管理やプロジェクト管理への投資も必要となります。
さらに、CRM の成功には従業員の協力が不可欠です。従業員が戦略やプロセスを確実に理解し、顧客中心の新しい文化に参画できるような環境を整えるようにしましょう。
こうした基礎条件や要素なくして CRM プロセスの成功はありません。

CRM バリューチェーン
バリューチェーンとは、マイケル・ポーターが提唱した高次的なモデルで、企業が最終製品やサービスを顧客に提供するまでのプロセスを示したものです。バリューチェーンモデルの目的は、企業にとって最も価値のある活動を特定して優先順位を付け、プロセスを改善して競争優位性の獲得につなげることにあります。
CRM バリューチェーンモデルはこの原理を顧客関係に応用したもので、顧客との関係構築に必要なすべての段階と活動に目を向けたものです。
こうした活動は、「主活動」と「支援活動」の2段階に分かれています。
主活動
CRM の主活動には、戦略を実現するための5つの主要プロセスが含まれます。
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顧客ポートフォリオ分析 : 最初のステップでは、IDIC モデルと同様に、顧客を分析し、自社にとっての戦略的に重要な顧客 (自社に対して創造する価値が最も高い顧客) を特定します。この分析段階で顧客を理解することで、そのニーズや期待に的確に対応し、顧客の生涯価値を最大化するための戦略を立てることができます。
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顧客との関係構築と囲い込み : このステップでは、顧客との関わりを通じ、基盤となる情報データベースを構築します。顧客をより深く理解し、サービスの質を高められるよう、一つ一つのタッチポイントで接客に関するデータを収集するよう努めます。顧客への理解を深め、ニーズに合わせて提供するサービスを調整することで、長期的な顧客維持につなげることができます。
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ネットワークの構築 : 企業のネットワークには、パートナー、サプライヤー、カスタマーサービス、投資家など、バリューチェーンに関わるすべての人や組織が含まれます。このステップでは、顧客データをこのネットワークのそれぞれのレベルのプロセスへ反映させ、システム全体が連携して顧客体験を最適化することを目指します。
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提案する価値の開発 : 顧客情報や接客を活用し、対象顧客へ届ける価値を作り込んでいきます。製品からサービスへと視点を移し、プロセスにかかる費用を削減することで、顧客に提供する価値の最大化を目指していきます。
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関係管理 : 最後のステップとなる顧客ライフサイクル管理では、顧客の獲得、維持と開発を管理するためのビジネスプロセスと組織構造の評価を行います。
支援活動
主活動に含まれる戦略プロセスを効果的に実行するには、以下の5つの支援活動が必要となります。
- リーダーシップと文化
- 調達プロセス
- 人事管理プロセス
- IT/データ管理プロセス
- 組織設計
こうした基礎条件を整え、発展させることで、CRM バリューチェーン導入の成功につなげることができます。
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