アジャイルが教えてくれたこと

アジャイル開発の歴史とアジャイルが教えてくれたこと

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トピック :

  • エンジニア
  • 製品開発

それは、Apple が「ポケットに数千曲」を持って出かけられる iPod を発表した年で、Microsoft が Xbox でゲームコンソールに参入し、Wikipedia と Google 画像検索サービスが開始され、Ericson が初の Bluetooth 対応携帯電話を発売した年でもありました。

しかし、世界中のソフトウェア開発者にとり、2001年は「アジャイルが生まれた年」として知られています。

ユタ州のスノーバードスキーリゾートで志を同じくする17人の専門家が2日間のミーティングで生み出したアジャイルソフトウェア開発宣言 (Agile Manifesto) は、コーディングに対する革命的なアプローチをもたらし、既存の「ドキュメント主導の重厚なソフトウェア開発プロセス」に代わるものとなりました。

今日、私たちが享受しているアジャイルの利点を理解するには、まずアジャイル開発の歴史を振り返ってみましょう。

アジャイル開発の歴史

アジャイルソフトウェア開発宣言の登場以前、ソフトウェア開発者は指揮統制システムの中で仕事をしていました。

ワークフローは主に、プロジェクトマネージャーがタスクを引渡し、その日のうちにすべてのタスクが完了するかを確認するというもので、コーダーは、全体像や顧客のニーズを考えられない低次元のコントリビューターとみなされることが多い状態でした。

アジャイルソフトウェア開発宣言の原則は、ソフトウェア開発とプロジェクト管理の様相を一変し、よりリーンで迅速、実験的に制作を推進する方向への転換の推進力となりました。

20年前、旧態依然とした会社組織という重荷と硬直的なプロセス観から開発者コミュニティを解放すべく始まったこの取り組みはすべてを変え、今日人気のスクラム、適応型ソフトウェア開発、エクストリームプログラミングといったプロセスの登場につながりました。

こうした新しい働き方と思考方法からアジャイルのフレームワークと新たな価値観が生まれました。

アジャイルソフトウェア開発宣言の価値

アジャイルソフトウェア開発宣言は、反復型ソフトウェア開発のための軽量なアプローチを示す4つの基本的な価値で構成されており、プロセスを開発チームに合わせるのではなく、チームにプロセスを合わせる姿勢に基づくアプローチです。

アジャイルの教訓は、価値 (または指針) という形で以下のようにまとめられています。

  • プロセスやツールよりも個人との対話を : 厳格なプロセス遵守よりもプロジェクトに関与する全員のコミュニケーションを優先します。
  • 包括的なドキュメントよりも機能するソフトウェアを : アジャイルにおいてもドキュメンテーションはプロセスに含まれますが、開発者が自由に操作できる、流動的の高い方法で行われます。
  • 契約交渉よりも顧客との協調を : 最初から最後まで顧客の意見を取り入れられる点は、アジャイル開発の大きなメリットのひとつです。
  • 計画に従うよりも変化への対応を : アジャイルソフトウェア開発宣言の原則によれば、変化はプロジェクト改善の可能性を強調するものであり、回避すべきコストではありません。

この20年間、アジャイルソフトウェア開発宣言の原則は、仕事面でのソフトウェア開発者とプロジェクトマネージャーの間の関係改善にとどまらず、影響範囲を広げ、浸透してきました。アジャイル開発の主な利点が、今日のさまざまな組織や業界のチームの仕事感の形成にも影響しています。

アジャイルの歴史が教えてくれたこと

アジャイル開発の歴史を今振り返れば、アジャイルソフトウェア開発宣言が新境地を開拓したことは明らかです。アジャイル開発はそもそもソフトウェア開発プロセスの簡素化の方法のひとつとして始まったものですが、さまざまな場面で、それとは知らずにアジャイルの原則とその教訓の多くが取り入れられています。

複雑化が進み、曖昧でもある世界では、結果達成のために成果をコントロールする予測・計画型のアプローチは、感覚と反応を主体とするアジャイルの思考方法に置き換えられつつあります。未来が不確実であることを認めることで、革新し、適応していくための自由度が高まってきたのです。

ここでは、現代の職場で受け入れられているアジャイルの教訓の例をいくつか紹介します。

より人間らしい職場を : パラダイムシフト

アジャイルソフトウェア開発宣言の登場まで、ソフトウェア開発の世界では「プロセス優先、人は二の次」という意識があり、ソフトウェア開発者が問題解決や効率化の支援、コーディングの専門知識以外の知見の提供を求められることはなく、こうした場面への参加の奨励もされませんでした。

アジャイルソフトウェア開発宣言の理念がテクノロジー企業に浸透すると、チーム内のコミュニケーションの質が仕事の成果の質に大きく影響するようになりました。

アジャイル開発では、ソフトウェアはマシンのためではなく、エンドユーザーである人のために作られるべきだとしています。野心的なプロジェクトのタイムラインや包括的なドキュメントを用意したところで、そうした人が何を求めているのかを本当に理解できなければ不十分です。

こうした背景から、アジャイルは現代のマネジメント理論を変え、テクノロジー以外の分野にも進出しました。

ただ、こうした変化はエンドユーザーのニーズや希望への配慮だけでなく、職場のあり方にも影響を及ぼしました。今では当たり前となった「ワークライフバランス」の概念には、アジャイルソフトウェア開発宣言とその理念が大きく寄与しています。コロナ禍であってもなくても、「アジャイル的なプロセスよりもチームのコミュニケーション重視」という姿勢なしで在宅勤務が大規模に導入されたとしたら、どうなっていたでしょうか。これに加えて、アジャイルは、自分らしい働き方の奨励にも寄与しました。

アジャイルのおかげで、従業員は厳格なスケジュールや席順に縛られることがなくなりました。昨今の在宅勤務へのスピーディな移行と普及の実現は、アジャイルとその特色である創造性、コラボレーションとコミュニケーション重視の姿勢に依るところが大きいでしょう。

その理由は、アジャイル型の職場では、従業員の自律性を重んじ、出社の有無よりも成果が重視され、それぞれが貢献する内容で評価されるためです。感知・反応型のアジャイル環境では、多様な個性が花開き、皆が自分の好きなように仕事をすることができます。

今では、従業員が自分の強みを発揮し、より効果的にチームワークを実践し、重要なプロジェクトを期日、予算や期待水準に沿って実現するため、作業負担を公平に分担することができるようになっています。

アジャイルの人間観と世界観

企業の規模や業種にかかわらず、今日の企業の大半は、優先順位が常に変わる優先事項への対応を迫られています。アジャイル思考を取り入れることで、市場の変化や顧客の嗜好の変化など、あらゆることへ適応しやすくなり、パフォーマンスの向上にもつながります。

アジャイルの世界観では、どんな分野であっても、仕事とは、人間的な要素を核とした創造的な取り組みであるとされています。信頼が基盤にあれば、アカウンタビリティと責任感が自然に育ちます。

こうしたアカウンタビリティには、自身の行動に対する責任を受け入れることだけでなく、選択の理由、そうした選択が結果に及ぼした影響に関して思慮深い洞察を共有することも含まれます。アジャイルの考え方では、失敗はもはやタブーではなく実験 (と失敗) であり、成功実現のために支払うべき代償なのです。

透明性を保ち、成果を上げるためにコラボレーションを進めることが最も大切なことです。

アジャイルの台頭は、米国企業全体の考え方の変化を表しています。アジャイル開発の利点のひとつに、日々優先順位を変えつつ、1か月(アジャイルチームで一般的なスプリント期間) 足らずで新たな目的に取り組む柔軟性が挙げられますが、これはテクノロジー業界の垣根を超えて広く普及しています。

例えば、多くの組織で採用されている日次のスタンドアップミーティング。これは、アジャイル開発ではおなじみのスクラムミーティングとスプリント計画の実践の一例であり、全員が各自の考えを共有し、フィードバックを出し合う開かれたプラットフォームとして、職場の民主化を如実に表すものです。

アジャイルやその要素の多くは仲間意識が基盤となっており、現代の職場にふさわしい、立場に関係なく誰でもアイデアを出すことができ、奨励される信頼感にあふれた雰囲気の創出に高い親和性があります。

アジャイルがもたらす迅速な学習と不確実性への対処のためのモデル

皆が平等に扱われ、アイデアを共有することが期待されるようになると、迅速に学び、不確実性に対応する能力が高まります。アジャイル開発は、チームとして働くことで、メンバー一人ひとりの力を単純に足し合わせたよりも指数関数的に大きな力が生まれることを示しています。

アジャイルの教訓として、今日アジャイルを実践しないチームにも採用されているものの一つに、(チームが小規模な場合は特に)各自がチーム全体の成功に貢献しなければならないというものがあります。

大きな自由には、当然ながら大きな責任が伴います。アジャイル環境では、チームの強さは最も弱い部分の強さで決まります。アジャイルでは、挫折や失敗があっても、他人のせいにするのではなく、目の前の問題に集中して解決することを重視します。

アジャイル的な思考でプロジェクトに取り組むことで、チームは問題や不確実性を早い段階で見つけられるようになります。アジャイルチームのスプリントの考え方では、エラー修正のための期間は数か月単位ではなく、数週間です。

今後のアジャイルの進化を読む

アジャイル開発の利点がもはやソフトウェア開発や職場に限定されないことは明らかです。アジャイルの影響は、継続的に自身を振り返り、努力を最大化する意欲に見られます。最近続々と登場しているフィットネスアプリ、ウェアラブルスマートデバイスや Wi-Fi 対応のエクササイズグッズにしても、反復によって改善を目指すアジャイルの考え方を下敷きにしたものといえます。

こうした、自己の成長と不確実性への対応手段への注目が再び高まっている現状も、アジャイルが職場の垣根を超え、日常生活に浸透している証左といえるのではないでしょうか。特定のタスクに集中し、完了のための時間を確保し、長期目標を達成可能な小さな目標に分割して実際の進捗を重ねるというアジャイルの手法は、誰にとっても有益なものです。

今後、アジャイルの考え方は他の分野にも広がっていくでしょう。例えば、金融機関との契約、独占的なパートナーシップ、販売契約などの交渉方法をアジャイルで変えることもできます。こうした取引は一般に、包括的な文書に基づく条件に対する合意に大きく依存したものです。

これは、アジャイルの導入にも適した環境といえます。アジャイルソフトウェア開発宣言の原則に沿い、プロセス全体で顧客との対話を行うことで、リスクを低減し、状況の変化に応じて過去の契約をリアルタイムで調整できるようになります。

アジャイルのアプローチは公衆衛生の分野でも採用されています。最近のコロナ禍での対応には、製薬会社との迅速なワクチンの試作やワクチンの展開の調整など、アジャイル的な姿勢が見られます。

重視すべきはテクノロジーよりも人間同士の交流ですが、もしテクノロジーがコミュニケーションの魅力を高め、障壁を取り除く手段となってくれるのであれば、それに越したことはありません。継続的な改善を実現する上では、線形に続くステップや既定の順序にとらわれず、対象範囲の変化に柔軟に対応できるツールを導入する必要があります。

例えば、ビジュアルコラボレーションスイート Lucid は、チーム全体がスピーディにアイデアの反復と共有を行い、プロセスよりも交流を重視し、プラットフォームや時差を超えてスムーズにコミュニケーションできるダイナミックなプラットフォームを提供します。不確実性の高まる世界で生産性の確保に活用するツールは変遷しても、過去20年間にアジャイル開発の歴史が教えてくれた教訓は、今後も変わらず頼れる指針であり続けることでしょう。

アジャイルの登場から20年以上が経ち、この方法論を支えるアプリやテクニックが数多く登場しています。Lucidchart をアジャイルの実践に役立てる方法を確認しましょう。

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