流れ図やフロー図とも呼ばれるフローチャートですが、このガイドではその定義、書き方・作り方、記号の意味、様々な種類、使用例や歴史など、フローチャートについて知っておくべきすべてを詳しく説明していきます。最後まで読んでいただきますと、初心者でもプロのようにフローチャートが書けるヒントやフローチャートの無料ツールについて説明していますのでお見逃しなくご覧ください。
この記事を読むのに必要な時間 : 7 分
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フローチャートとは?
フローチャートとは、業務のプロセス、システム、プログラムプログラム処理を示す流れ図です。複雑化しやすいプロセスの記録、学習、計画、改善、伝達を明確かつ分かりやすい方法で実現するためのツールとしてさまざまな分野で広く活用されています。
シンプルな手描きの図から複数の手順とルートを示すコンピューターで描画された包括的な図まで、その内容はさまざまです。そのさまざまな様式をすべて考慮に入れれば、フローチャートは最も一般的に使われる図のひとつと言えるでしょう。
フローチャートの活用場面
- 業務の可視化
社内の作業手順や申請フローなどを図にすることで、誰でも理解しやすくなります。 - 業務改善・効率化
無駄な手順やボトルネックを発見し、改善ポイントを明確にできます。 - 教育・研修
新人研修や業務引き継ぎにおいて、業務内容を直感的に伝えられます。 - セールス・マーケティング
営業フローやアンケートの分岐など、顧客対応プロセスを整理・最適化できます。 - 製造・エンジニアリング
製品の製造工程やシステム設計など、複雑なプロセスを視覚化して共有できます。
フローチャートを理解するための基本構造と読み取り方
フローチャートの基本構造
フローチャートを理解するためには、まず「どんな流れで処理が進むのか」という基本的な構造(制御構造)を知ることが大切です。プログラミングや業務フローでも共通する3つの基本構造を紹介します。
1. 順次構造(Sequence)
最も基本的な形で、処理が上から下へ順番に1つずつ実行される流れです。
途中に判断や繰り返しはなく、決まった手順を順に進めていきます。
例:
-
「注文を受ける → 在庫を確認 → 発送する」
-
「データを入力 → 保存 → 閉じる」
記号:四角(処理)を矢印でつないでいくだけのシンプルな形
2. 分岐構造(条件判断 / Selection)
ある条件に応じて、処理の流れが分かれる構造です。
「Yes / No」「AかBか」など、判断によって異なるルートに進みます。
例:
-
「在庫があるか?」→ Yesなら出荷、Noなら発注
-
「ユーザーがログインしているか?」→ ログイン中:マイページ、未ログイン:ログイン画面へ
記号:ひし形(条件判断)を使い、そこから矢印が2方向以上に分岐
3. 反復構造(ループ / Repetition)
特定の条件が満たされるまで、同じ処理を繰り返す構造です。
業務やプログラムで「~するまで繰り返す」という処理に使われます。
例:
-
「パスワードが正しいかチェック → 間違っていたら再入力」
-
「在庫がある限り商品をピッキング」
記号:ひし形(条件)と矢印を使って、ループ構造を形成
フローチャートの読み取り方のコツ
-
開始点(Start)と終了点(End)は丸い楕円で表されます。まず「開始」から見て、矢印に沿って流れを追いましょう。
-
処理内容は四角、判断はひし形、入力や出力は平行四辺形で表されるのが基本です。
-
流れに沿って「どこで何をしているのか」「条件によってどう変わるのか」を意識して読むと、全体像がつかみやすくなります。
フローチャートの記号と意味
ここではいくつかの代表的なフローチャート記号をご紹介します。
その他の記号については、フローチャート記号ページにて一覧をご覧ください。
記号 | 記号名 | 説明 |
---|---|---|
| 処理記号 |
「行動記号」とも呼ばれ、処理、行動、機能を示す図形です。フローチャート作成で最もよく使われる記号です。 |
| 開始/終了記号 |
「終端記号」とも呼ばれ、開始点や終了点、軌道のもたらす潜在的な結果を示す記号です。一般に図形内に「開始」または「終了」の記述が含まれます。 |
| 書類記号 |
具体的には、書類の入出力を表します。書類の入力の例としては、レポート、メール、発注書の受領が挙げられます。書類の出力の例としては、プレゼンテーション、メモ、通信文の作成が挙げられます。 |
| 判断記号 |
回答を要する質問を示します。回答は通常、はい/いいえ、または真/偽で示されます。この記号の後で、フローチャートのパスが回答や結果に応じて分岐することもあります。 |
| 結合子記号 |
主に複雑度の高いフローチャートで用いられ、別々の要素を1つのページ内で接続する記号です。 |
| ページ外結合子記号 |
別々の要素を複数のページ内で接続する記号です。参照しやすいよう、通常は記号内にページ番号が振られます。複雑度の高いフローチャートでしばしば用いられます。 |
| 入出力記号 |
「データ記号」とも呼ばれ、入出力が可能なデータや使用または生成されるリソースを表す記号です。紙テープの記号も入出力を表しますが、古い記号であり、現在のフローチャート作図では一般に使用されません。 |
| コメント/メモ記号 |
コンテキストに沿って配置される記号で、必要な説明やコメントを特定の範囲に追加します。フローチャートの関連するセクションへ破線で接続することもできます。 |
| フロー矢印 |
処理の流れや手順の順番を示す記号です。どの作業の後に何が行われるかを視覚的にわかりやすくするために使われ、通常は上から下、または左から右へ向かって描かれます。 |
フローチャートの書き方
書き方のポイント:
-
各記号の意味を正しく使い分ける
-
左から右、上から下へ流れるように配置
-
処理単位は具体的かつ簡潔に記述
フローチャートの基本的な書き方
-
目的と範囲の定義:
- 目的: プロセスやタスクの流れを視覚的に表現し、参加者にとって理解しやすくすること。
- 範囲: 特定のプロセスやタスクに焦点を当て、その手順を整理し、フローチャートとして表現すること。
-
始点と終点の確認:
- 始点: プロセスやタスクの開始地点、最初のアクションや入力データの受け取り。
- 終点: プロセスやタスクの完了地点、最後のアクションや出力データの生成。
-
調査段階の詳細な検討:
- 参加者との面談: プロセスに関与するすべての関係者と会話し、プロセスの詳細を把握する。
- プロセスの観察: 実際にプロセスを見て、手順やデータの流れを理解する。
- 既存の文書の確認: すでに存在する手順書や文書をチェックし、基準とする情報を取得する。
-
タスクの時系列で特定:
- プロセス、判断、データ、入出力などのタイプ別に、それぞれ適切な図形(例えば、プロセスは長方形、判断は菱形、データは丸など)を使用して、タスクを整理する。
-
手描きスケッチまたはLucidchartなどのフローチャートツールを使用した図の作成:
- 手描きスケッチ: 初期のアイデアを手書きでスケッチし、基本的なフローを確認する。
- Lucidchartなどのフローチャートツールを使用: オンラインツールを使用して、より正確で美しくフローチャートを作成する。
-
プロセスの参加者との確認とフィードバック:
- プロセスの参加者と一緒にフローチャートを確認し、理解されやすいかどうかを確認する。
- プロセスを観察して、目的の達成に重要な要素が欠落していないことを確かめる。
これらの手順を通じて、目的の達成に向けてプロセスやタスクを適切に整理し、参加者にとって理解しやすいフローチャートを作成することができます。
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フローチャートの作成フローチャートの活用例:業界・分野別まとめ
フローチャートは、さまざまな分野で「業務の可視化」「学習支援」「業務改善」など多目的に活用されています。以下では代表的な分野ごとに活用方法を整理しました。
ビジネス・業務改善
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発注・調達フローの明確化と効率化
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社内業務(申請、承認、報告など)の可視化
-
業務の属人化を防ぎ、誰でも理解できる業務マニュアルの作成
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法規制(例:サーベンス・オクスリー法)に対応した監査フローの文書化
-
新規事業や製品開発におけるステップの明確化

セールス・マーケティング
-
セールスプロセス(リード獲得→契約まで)の視覚化
-
アンケート設計や登録フローの図式化によるユーザー体験改善
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広報対応(例:クレーム対応や危機管理)の手 順整理
-
マーケティング戦略の全体像を図で共有

教育・学習支援
-
授業計画・プレゼン内容の整理
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学習プロジェクトや研究課題の構造化
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文学・映画のストーリーや登場人物の関係の可視化
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生物・化学などのプロセス(例:クレブス回路・消化・DNA複製など)の図解
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仮説や理論(例:マズローの欲求段階説)の整理・伝達
-
アルゴリズムや論理的思考の理解支援
製造・生産管理
-
製造工程(原材料→完成品)や組立手順の可視化
-
製品構成要素の分解表示(BOM的視点)
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非効率な手順やボトルネックの発見・改善
-
製造ラインの設計・再編の検討資料として
エンジニアリング・システム設計
-
ソフトウェア開発やシステム構成の設計図として活用
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プラント設計、化学工程のプロセスフロー図の作成
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構造物や製品のライフサイクル管理フロー
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リバースエンジニアリングの工程整理
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試作→評価→改善という製品開発の工程表現
プログラミング・アルゴリズム
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プログラムの処理手順を視覚的に表現
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コードの構造や仕組みの説明に利用
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Webサイトやアプリのユーザー 動線を整理
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擬似コード作成前の設計ステップとして活用
また、フローチャート以外にも、プログラミングでは以下のような図が使われます:
-
UML図:システムの構造や動作をモデル化
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NSチャート(ストラクトグラム):構造化プログラミング用の図
-
DRAKON図:見やすさを重視したアルゴリズム設計図

その他の例
-
政治・行政手続きの説明(例:有権者登録、行政申請フロー)
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創作活動(歌詞・詩・小説など)の構成設計
-
医療現場での症状フローや治療選択の視覚化
フローチャートの主な種類とその特徴
フローチャートにはさまざまなタイプがあり、目的や使う分野によって使い分けられます。以下に、代表的なフローチャートの種類を紹介します。
1. 文書フローチャート
部門間や業務間の文書の流れを可視化します。ビジネス文書や帳票が、どの部署からどこへ流れるかを示すのに有効です。
2. データフローチャート(DFD)
システム内でのデータの流れを表現します。処理内容よりも、データがどのように入力・処理・出力されるかに注目します。
3. システムフローチャート
情報システム全体の構成要素と流れを示します。データ入力、処理、保存、出力などの流れをハードウェアやソフトウェア単位で表現します。
4. プログラムフローチャート
プログラムの内部処理やロジックを図で示すものです。条件分岐や繰り返しなど、具体的な処理の流れを明確にします。
5. 決定木(Decision Tree)
判断基準による選択肢や行動パターンを図にしたものです。業務マニュアルや問い合わせ対応などに活用されます。
6. ロジックツリー
論理的な思考プロセスを視覚化したもので、問題解決やシステム設計時の検討に役立ちます。
7. 製品フローチャート
製品や原材料がどのように製造・加工されるかの手順を示す図です。工場などの工程管理に使われます。
8. プロセスフロー図(Process Flowchart)
業務や作業手順を標準化・効率化する目的で使われます。製造、サービス、事務処理など幅広く利用されます。
その他の関連図(フローチャートの応用)
種類 | 用途・特徴 |
---|---|
スイムレーン図 | 複数の担当部門や役割を区分して、プロセスの責任範囲を明確にする図 |
業務フロー図 | タスク・文書・情報の流れを示し、業務の全体像を整理 |
EPC(イベント駆動型プロセスチェーン) | 業務プロセスの構造や順序を詳しく文書化する手法 |
SDL(仕様記述言語)図 | ソフトウェアやシステム設計で使われる高度なプロセス図 |
BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記) | ビジネスプロセスを標準化された記号で図示する業務改善ツール |
これらのフローチャートを目的に応じて使い分けることで、情報の可視化と共有がよりスムーズになります。
初心者でもプロのようにフローチャートが作れるコツ
1. 目的と受け手を最初に定義する
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目的:問題の可視化?新メンバーへの説明?システム設計?用途によりレベル感が変わる。
-
受け手:技術者/非技術者、社内/社外、経営層/現場などで言葉・記号の使い方を変える。
ヒント:上司に提出するなら簡潔に、開発者チーム向けなら詳細に。
2. プロセスを理解してから描き始める
-
実際の業務・手順を事前に観察・ヒアリング・棚卸しする。
-
曖昧な部分は無理に記号化せず、関係者に確認する。
ヒント:理解せずに描き始めると、図が「正しそうだけど使えないもの」になります。
3. 記号と構造は標準に沿って使用する
-
【開始・終了】楕円、【処理】四角、【判断】ひし形など、基本記号は国際標準(ISOやJIS)にも準拠。
-
各記号の意味が一貫していないと読み手が混乱します。
ヒント:社内標準(ガイドライン)を持つと複数人でも統一感ある図を作れる。
4. 複雑化を避け、分割統治する
-
ノード(記号)数が多くなったら「プロセスの分割」を検討。
-
長すぎるフローは、「ページ外結合子」で別ページへ分岐。
-
条件分岐が多すぎる場合は、別図に切り出してもOK。
ヒント:「1図=1目的」で構成すると理解されやすい。
5. スイムレーンで役割分担を明確化
-
部署や担当者単位でプロセスを区切ることで、責任の所在と業務の流れが可視化される。
-
誰が何をやっているかが見える図は、改善にもつながる。
ヒント:スイムレーンは「業務改善の気付き」を得る強力な手段。
6. 統一されたデザインルールを使う
-
同じ記号サイズ、色、フォント、矢印の太さや形状を揃える。
-
複数の人が作成する場合は、 テンプレートやスタイルガイドを共有。
ヒント:LucidchartやVisioのスタイル機能を活用すると便利。
7. レビューとフィードバックを重視
-
作成後、関係者(実務担当者、PM、開発者)に必ずレビュー依頼。
-
「理解できるか」「誤解を生まないか」「抜け漏れがないか」を確認。
ヒント:自分では完璧に見える図でも、他人には不明瞭な場合が多い。
8. 定期的なメンテナンスを行う
-
プロセス変更があれば図も更新。放置された図は信用を失います。
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更新日・作成者・バージョン情報は記載しておく。
ヒント:「最新図であるかどうか」が常に重要視されるドキュメントです。
このように、ルールに沿って丁寧に作れば、プロセスの可視化だけでなく、業務改善やチームの連携にも大きな力を発揮します。
無料で使えるすぐに使用・ダウンロードできるフローチャートテンプレート
Lucidchartでは、すぐに編集・活用できる豊富なフローチャートテンプレートが用意されています。初心者からプロフェッショナルまで、目的や業種に合わせて選ぶだけで作業がスムーズにスタート できます。
テンプレートを活用するメリット
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チームメンバーとリアルタイムで共同編集
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人気テンプレート一覧
- 基本的なフローチャート:一般的な業務フローや手順説明
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知っておきたいフローチャートの歴史
フローチャートが業務プロセスの記録に使われるようになったのは、1920年代~1930年代のことです。1921年に、生産管理技術者のフランク・ギルブレスとリリアン・ギルブレスの夫妻が、「フロープロセスチャート」をアメリカ機械学会 (ASME) で紹介しています。 1930年代初頭には、工業技術者のアーラン・H・モジェンセンが、自社の業務効率向上をテーマとした会議でのプレゼンテーションでギルブレスのツールを使用しています。 1940年代には、モージェンセンの薫陶を受けたアート・スピナンガーとベン・S・グラハムの両氏がこのメソッドをより広範に普及させています。スピナンガーは、Procter and Gamble に業務の簡略化手法を導入しています。Standard Register Industrial の取締役であったグラハムは、フロープロセス図を情報処理に採用しました。1947年に、ASME は、ギルブレス夫妻の業績から派生したフロープロセスチャートのための記号システムを採用しています。


また、1940年代後半には、ハーマン・ゴールドスタインとジョン・フォン・ノイマンがコンピュータープログラムの開発にフローチャートを用いています。その後間もなく、フローチャートはあらゆる種類のコンピュータープログラムやアルゴリズムのための人気のツールとなりました。フローチャートは現在でもプログラミングに用いられていますが、より詳細なレベルを表し、最終製品に近づくことができるよう、また、人間が読解できるように単語とコード言語を組み合わせた疑似コードが用いられるのが一般的です。

日本では、製造業における品質への取り組みで知られる人物、石川馨 (1915年~1989年) が、品質管理の重要なツールの1つとして、ヒストグラム、チェックシート、現在では石川図と呼ばれることも多い原因結果図などの保管ツールとして、チャートなどの補完的なツールともに、フローチャートを挙げています。
